107 蛇 崩 山





【登 山 日】2006年11月3日(祝)〜4日(土)
【メンバー】日本山岳会関西支部:会員 12名、会員外 7名
【コースタイム】3日 餓え坂入口11:50…玉置山(昼食)12:10〜12:45…展望台13:05〜13:15…宝冠ノ森14:00〜14:10…玉置神社15:15〜15:35…玉置神社駐車場16:00
4日 上葛川06:30…明日平(尾根に出たところ)07:35〜07:45…作業小屋後08:25…熊谷ノ頭08:50〜09:00…蛇崩山09:25〜09:40…熊谷ノ頭10:00〜10:07…笠捨山東峰11:00〜11:35…笠捨本峰11:45〜11:53…葛川辻12:15~12:25…地蔵岳分岐13:05〜13:15…上葛川14:47


宝冠ノ森は一時、南奥駈道最後の行所と言われていた。これは江戸後期に入って逆峰が一般的となり、玉置山から本宮までを歩かずに玉置山から竹筒に出て、北山川を舟で新宮に下ることが多くなったためである(森澤義信氏「大峰奥駈道七十五靡」)。また上掲書によれば笠捨山から古屋宿間の稜線上の現在の奥駈道も江戸時代には使われず、笠捨山から熊谷ノ頭を経て上葛川に下り、ここから古屋宿に登り返していた。今回の例会ではこの奥駈道最南部の行所を訪ね、上葛川から「江戸道」を辿ることになる。
秋晴れの3日。遠く徳島から参加の三人を含む会員12、一般参加者7の19名パーティは貸切バスで大和八木を出発、十津川村折立から玉置山に向かう。玉置神社駐車場近くで左の林道に入り、「世界遺産」の大きな石碑のあるところでバスを下り「餓え坂」を登る。なだらかな道を20分も登ると、三角点と沖見地蔵尊の祠がある玉置山頂に着いた。南東の宝冠ノ森に続く三つのピークが見ながら、青空の下で昼食をとる。   
シャクナゲの林を下ると十字路になっていて、左は花折塚へ右は玉置神社への道を分ける。勧業山の碑と大きな案内図がある。直進してなだらかに登るとミズナラやアセビの茂る1064m峰で、これを下った鞍部から登り返して1057mピークに立つ。二股に分かれた道を左に行くと、100mほどで見晴らしの良い絶壁の上にでた。登山者がひとり、食事をしていたが多人数の私たちに展望場所を譲ってくれた。中八人山から明日登る笠捨山、蛇崩山、そして西峰に続く山々が一望され、右下に目指す宝冠ノ森が紅葉の山肌を輝かせている。しばらく展望を楽しんだあと、落ち葉を踏みながら1057m峰に帰る。
分岐を右に行くと急坂の下りになる。一段下りたところにザックを置いて身軽になり、更に下る。大きな一枚岩に鎖が下がっているが、スタンスが殆どないので多人数の通過に時間がかかった。
下りきると丸太が一本渡してあるキレットで、少し登り返すと美しいブナやミズナラの林の中に入る。大きな岩の上に碑伝が打ってあるところが宝冠ノ森である。まず、少し先の断崖の上まで行き展望を楽しむ。先程見た山々と蛇行する熊野川を望んだあと、行所に帰って手を合わせ般若心経を唱えた。
元の道を帰り、勧業山の碑から玉置神社に下る。社務所前でお茶をご馳走になったあと神社に詣で、樹齢3千年の神代杉を見学。参道途中にある枕状溶岩を見て、駐車場で待つバスに乗る。
 花折塚手前の展望台でしばらく大峰山脈南部と果無山脈などの夕景を楽しむ。
 この夜の泊まりは上葛川の民宿「うらしま」。小熊の剥製の出迎えを受け、ボタン鍋や鮎の塩焼きのご馳走に舌鼓を打った。

4日。6時半に宿を発つ。すぐ前の葛川を吊橋で渡り、対岸の小さい沢の横に付けられた道を登る。棚田から枯れたタケニグサの群落、ヒノキ植林と次第に急登になるが、支尾根にでたところで傾斜が緩み、西側山腹をトラバースするように行く。稜線を東側に乗越すところで休憩。ここから展望が開け、熊谷ノ頭や蛇崩山を見ながらシダの群落の中を行く。
再び樹林帯に入り、1040mピークを越える。コルには全壊した作業小屋があり、割れた一升瓶が散乱していた。ここから丈の低い笹原の斜面になり、道が入り乱れているが、右手の樹林帯に沿って直登する。少し頑張ると熊谷ノ頭の標識があった。
T字路になった道は左へ行くと笠捨山だが、右に延びる尾根上の蛇崩山へ寄り道する。緩やかに起伏するコブを二つ越してヒノキ林の道を行く。黄色く色づき始めたカラマツやコミネカエデの紅が美しい。最後に急登でもう一つコブを越すと、大きなブナが林立する中に蛇崩山の広い頂上があった。記念写真のあと元の道を熊谷ノ頭に帰る。
最初は緩やかなアップダウンだったが、やがて傾斜が強まり露岩の散らばるピークを越して行く。最後は笹原の中の胸を突くような急坂を登ると、ぽっかりと電波反射板が立つ広場に飛び出した。笠捨山東峰である。
 正面から手前にかけて釈迦ヶ岳から続く奥駈道が通る山々が見え、七面山、中八人山も霞んでいる。黄葉の中に真っ赤なカエデが一本、前景に彩りを添えている。腰を下ろし「うらしま」で作って貰った弁当を広げる。
笠捨山は双耳峰で、かって仙ヶ岳とも呼ばれた本峰は少し先の西峰になる。思えば去年5月、奥駈山行でここに着いた時は激しい雨の中だった。今日は申し分ない天気だが、この頂上は狭いので記念写真だけをとって南へ進む。槍ヶ岳への登りにかかる手前の葛川辻で奥駈道を離れ、上葛川に向けて下る。
紅や黄に染まった樹の間に、ちらちらと見える笠捨山を振り返りながら行く。山腹をくねる道は急でないだけに長く、桟道や崩れた沢のトラバースを何度となく繰り返す。
 地蔵岳へ登る分岐を見送ると、しばらくして苔むした石垣なども現れてくる。黒いホースで取水している沢を横切って、左に枝又滝が見えると間もなく舗装路にでた。迎えに出ていた「うらしま」の主人に見送られて上葛川を離れ、帰路の温泉地(とうせんじ)温泉で山の汗を流した。天気にも、展望にも、紅葉にも…そして何よりも素晴らしい仲間達に恵まれた、楽しい二日間の山行だった。

 「奈良100遊山プラス10」    ペンギン夫婦お山歩日記
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