二度目のキナバル山

【登 山 日】2007年1月20 日(土)〜1月21日(日)
【メンバー】千日山歩渉会(L芳村嘉一郎、井上博美、遠藤歳夫、川原 嵩、高橋 宏、西 勝美、平田範夫、松井 肇、安川武彦、安川智恵子  <会員外> 若槻壽一 計11名)

2007年1月19日
昼にマレーシア航空直行便で関空を発ち、わずか5時間半のフライトでコタキナバルにつく。機を降りるとむっとした熱帯の空気が身体を包む。現地ガイドのKen Wongに出迎えられ大型バスに乗り込む。サバ州が独立50周年を迎えたことなど現地の説明を聞きながら、夕方の渋滞を避けてバイパスから山道に入る。雲が多く、なかなか山が見えない。そのうちに猛烈なスコールがバスを叩く。辺りが薄暗くなってクンダサンの灯りが見え始める頃、雲が切れてようやくキナバルの山頂部が見えた。丘の上に立つパーカサー・ホテルに入り、中華風の夕食。夜、時々雨の音が聞こえる。明日の天候が気がかりで眠りは浅かった。
1月20日
 ホテルのゲートの向こうにキナバル山が見える筈が、今朝は一面の濃い霧で、ときどき雨滴も落ちてくる鬱陶しい天気である。朝食は目玉焼きダブル、ソーセージ、甘く煮た豆、パン、オレンジジュース、コーヒー、デザートにはマンゴー。山の中にしては立派なメニューで、しっかり腹ごしらえをしてバスに乗る。クンダサン周辺は野菜の産地として名高く、山に向かう途中で大きなマーケットの前を通る。トタン屋根の店の前に車がずらりと並び、大勢の売り手買い手で賑わっている。雲が切れて山肌に日があたってきた。次第に拡がる青空に期待も高まってくる。
 キナバル国立公園事務所(PHQ)の横には美しいランの花が咲いていた。道を挟んで大きな案内図があり、その背後の針葉樹林の上に真っ青な空を背にしたキナバル山の全容が姿を現した。ドンキーイヤーズ「ロバの耳」を始め奇怪な岩峰群が白く輝いて目を引くが、目指す最高峰「ロウズ・ピーク」はここからは見えない。
 何台かのバスが停まり、いろんな国の登山者を待ち受けるガイドやポーターたちがたむろしている。私たちのグループにはSAVERINOS, JAMOLの若い二人のガイドとポーター3名が加わった。
登山手続きをして貰いIDカードを受け取って公園内の専用バスに乗り換える。
 10分程走り、登山口のティムポホン・ゲート(近くに発電所があるので現地ではPower Station の方が通りがよい。1866m)でKENと別れる。登山道が混み合わないように、時間差でゲートが開閉されるが、この時間は登山者が少ないようで待つ間もなく出発できた。
まず、初代公園管理官の名を付けたカールソン滝へゆるく下る。苔の緑が滝の飛沫で光り、キナバルブルサムが淡い赤紫色の花を咲かせて並んでいる。滝の前の流れを渡るとすぐに急坂の登りになり、次第に高度を上げていく。
 登山道は固い木(IronWood)枠で土止めした階段や手すりで良く整備されているが、私たち小柄な日本人には段差が大き過ぎるのが難点である。まるでハシゴを登るような急勾配に、たちまち額から汗が滴り落ちてくる。19821m地点にある最初のシェルター(避難小屋)で一息入れる。トイレや蛇口のついた水タンクも側にある格好の休み場である。
 「苔と暗い森のゾーン」と呼ばれる熱帯雨林帯の中を登る。500mごとに距離と標高の記された道標が設置されているので良い目安になる。
 この山ではガイドの雇用が義務づけられているが、先頭を行くJAMOLは若年ながら週に二度はこの山に登っているといい、経験は十分である。私たちのペースにあわせて歩きながら、周りの珍しい植物を指さして教えてくれる。キナバル公園の中では9種類あるという食虫植物ウツボカズラや、木の幹に生える白いランの花などが目を楽しませてくれる。
二つめのシェルターで標高は2,081m.。道は細く急な尾根になる。この辺りで「ロウのウツボカズラ」が見られる。昆虫を栄養にするこの珍しい植物は、痩せた土地で生きていくのに適応した結果だろう。
 近年、乱獲されて激減しているという。左にテレコムステーション(TV中継塔)の急な登り道を分けて、やや勾配のゆるんだ道を行く。中継塔とほぼ同じ標高まで登った第三の避難小屋でしばらく休む。
細くやわらかい感じの竹や大きなシダの茂みで騒がしい鳥の声がするが、姿は見えない。オレンジ色のシャクナゲの花や野生のラズベリーを見ながら登る。疲れた足を励ましながらラヤンラヤン(2,740m)に着く。
 今日の泊まり、ラバン・ラタ・レストハウスまでのほぼ中間地点である。シェルターに入り、昼食のランチボックスを開く。チーズサンド、カレー風味のチキン唐揚げ、煮抜きタマゴにリンゴ。疲れが出てきたのか少し食欲がなく、珍しく食べ残した。
午後も厳しい登りが続く。赤褐色の土の急坂を登ると、工事現場がありブルトーザーが入っているが、2年前から工事が進んでいないように見える。
 久しぶりに太股や脹ら脛が攣りそうになってきた。暑いと思ってタイツをポーターに預けてしまったのが悔やまれる。
 先頭を歩く私はいつもより休憩を多い目にとり、時間をかけて登ることにしたが、それでも次第に隊列が延びていく。食事中から曇ってきた空から小雨が降り出し、雨具とザックカバーをつけて登る。
サヤッサヤッやヒースシャクナゲが現れる2900m辺りでは、いったん樹林が切れて露岩の間を行く。晴れていれば左手にパナール・ラバンの大岩壁、正面にはドンキー・イヤーズなどの山頂部が見えるところであるが、残念ながら霧雨に煙ってた。再び林の中に入る。曲がりくねった木の幹にサルオガゼの類の寄生植物が無数に群がっている。第5シェルターで休む。ラバンラタ山小屋まであと標高差270m。最後の登りを頑張っていくと、見覚えのあるタンポポに似た花が霧の中に浮かんできた。
  15時15分、標高3,272mの
ラバンラタ・レストハウスに到着。部屋に落ちついてしばらくすると激しい雨になった。ビュッフェスタイルの夕食にはバナナのフライ、ナタデココ様のデザートまであり、味付けも悪くない。もちろんコーヒー、紅茶は飲み放題。三部屋に別れたが、私たちの部屋は二段ベッドが二組。温湯シャワー室もあり、日本の山小屋では考えられない快適な環境である。故障していたヒーターが修理されたが、今度は暑すぎて目が覚めた。この夜も殆ど眠れぬうちに登頂の朝を迎える。


<コースタイム>
Power Station 登山口08:25…第1シェルター8:58~09:07…第3シェルター10:00~10:08…2q標識10:20…第4シェルター11:03~11:15…ラヤンラヤン(昼食)11:55~1220…第5シェルター13:35~13:50…5q標識14:23…ラバンラタ小屋15:15


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