89 磯 砂 山(661m)





89 磯砂山(661m) <丹波高原西部>

(いさなごさん)661m。丹後半島のほぼ中間部、京丹後市峰山町にある天女伝説の山。中腹まで車道が通じ、登山道もよく整備されていて、地元の人に親しまれている。 

一夜を過ごした国民宿舎・丹後由良荘を後に、川沿いの府道を南に車を走らせる。正面の磯砂山が次第に近づいてくる。
 乙女神社近くで道端のおばさんに道を聞き、府道と舗装林道を4q登ると「羽衣茶屋」がある。ただしトイレとベンチだけの無人休憩所である。すでに標高400m、車を置いて小雨の中を出発。やや勾配の強い舗装道を300m登ったところが登山口で、「頂上まで1010段」という標識がある。
 しばらく登ると左手のガレ場の上をトラバースして、峠状になったところに「磯砂女池」への分岐がある。池へは帰りに寄ることにして、「あと870段」を頑張ることにする。雨はいつの間にか止んだ。
階段は適度な歩幅になるように工夫され、しかもチップが埋め込んであって足に優しく、歩きやすい。右手、海側が開けてきたが霧が出てきて乳白色のベールに覆われている。「南無妙法蓮華経」と彫られた石塔を通過して、ひと登りで頂上の広場に着く。登山口から僅か40分、楽なハイキングだった。 一等三角点があるので展望はよい筈だが、あいにく霧の中で展望はまったくゼロ。ヘリコプターで天から舞い降りたというモニュメントの天女と記念撮影して元の道を下る。 
分岐から小さなコブを越えて礒砂女池に行ってみた。今は薄暗い木立に囲まれた小さな水溜まりに過ぎないが、昔は天女が水浴びしたというほど、神秘的で清澄な池だったのだろう。
 茶屋に帰る頃、また雨が降り出した。林道から府道へ降りたところで、偶然、先ほど道を尋ねたおばさんに出会った。挨拶すると「天気が悪くて悪かったねえ。どこから来たの」、そして「お茶、飲んでいきませんか」と言ってくださった。昔ながらの旅人への親切が嬉しかったが、このあと太鼓山へ行くので辞退した。
乙女神社は、天女の子供を祀ったという言い伝えがあり、前にキャンプ場などの施設をもつ「天女の里」がある。参拝して天女の里でお土産に桃を買った。鱒止の青々した田園風景の中で振り返ると、展望に恵まれなかった私たちを気の毒がるような磯砂山が、「今度はいい天気の時においで…」と見送ってくれていた。


2007年7月26日【コースタイム】羽衣茶屋09:10…登山口09:15…礒砂女池分岐09:25…礒砂山09:50〜10:15…礒砂女池分岐10:27…礒砂女池…分岐10:40…登山口10:45

 
「礒砂女池の羽衣伝説」(分岐の説明板より)北畠親房著の元元集(1337年)に『丹後国風土記に曰く、丹後国比治の山(磯砂山)の山頂に井あり。その名を真井(女池)という。この井に天女八人降り来て水を浴(あ)みき。麓の和奈佐という老父(おきな)、天女の衣をかくし、児として無理に連れ帰る。天女万病に効く天酒(てんのさけ)をよくす。十有余年するうち、老父の家富み栄えるも、老父は”汝はもともと、わが児にあらず”と家より追う。天女は泣く泣く放浪し、竹野の郡(こおり)船木の里にたどりて死す。里人天女を奈具社(なぐのやしろ)に祀る。こは豊宇賀能売(とようかのめ)の命(伊勢外宮の豊受大神)なり』と、このように女池の羽衣伝説は日本各地に数ある天女伝説の中でも、極めて格調の高いものである。(大宮町)

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