53 白髭岳(1,378m)





(しらひげたけ)別称・朝倉山 吉野郡川上村のほぼ中央、池木屋山北西野赤倉山から南西に延びる稜線上にある。山頂に白髭大明神の祠があったことで山の名がついた。西側山麓の神之谷にある金剛寺には南朝の遺跡がある。

柏木で吉野川を渡り、神之谷集落から峠を一つ越した東谷出合(530m)まで車で入る。
 地道の東谷林道を10分ほど歩くと終点となり、ここが登山口である。右手の谷へ下り、3度ほど沢を渡り返す。薄暗い谷の奥に細長い滝を見上げ、左の山腹の道に入る。右手下の谷にかかる滝と壊れた小屋を見て、道が谷に近づくところで水流がなくなった谷を離れる。
ジグザグの登りから、手入れの行き届いたヒノキの美林の中を急登する。やがて頭上が開け、ホトトギスやウグイスの声を聞きながら、コアジサイの花の中を行く。
 思ったより楽に登り切って稜線に出ると、神の谷コースとの分岐である。腰を下ろすと、涼しい風が頬をなで、降るようなセミの声に包まれ、恐ろしいほど山深い感じがする。尾根通しに雑木林の中を登り、コル状になった処で右手が開け、真下に不動窟の赤い屋根と幟が見えた。静まりかえった中で突然、激しい物音がして大型の鳥が羽ばたきの音高く飛び立って、斜面沿いに滑空して行った。タカのように思えた。
大きな岩を捲き、露岩混じりの痩せ尾根を行く。やがて北側のヒノキ植林の切り開きから薊岳から明神岳、桧塚、迷岳へと続く稜線が一望されるようになる。行く手には鋭い頂を天に突き上げた白髭岳が見える。
 緩く登って低い笹原の中の明るい小台地、小白髭に着く。北側の集落では、ここを白髭岳とか粉尾(そぎお)峠、これから登る白髭岳をアサクラ山と呼ぶそうだ。
緩く笹原を下る。小うるさいほど痩せ尾根のアップダウンがあり、目立つピークだけでも4つを越していく。50m近く下るところもあるが、ブナやヒメシャラなどの木影を行くので思ったより涼しい。三つ目のピークは大きな岩の右手を捲いて、まだらロープが取り付けてある急坂を登る。
 四つ目のピークに立つと、目の前にすっくと白髭岳が立ちはだかっている。緑の山肌に一群の真っ赤なヤマツツジが鮮やかである。
最後の急登を終えて白髭岳山頂に立つ。山名の由来となった白髭大明神の祠は今はなく、三角点の前に「今西錦司先生1500山目の山」の小さい石柱がある。側面には「一山一峯に偏らず。一覚一私に偏らず。錦司」とある。
 展望は南側が日出ヶ岳から三津河落山と続く大台ヶ原、その右(南西)に孔雀岳から弥山、大普賢、山上ヶ岳へと続く大峰の山々。その右に丸い小白髭のピークが低く見える。展望を楽しみながらのランチタイムを終え、東へ少し下ると、露岩が散在し、迷岳、赤ー山、池木屋山など東から南にかけての展望が大きく開ける。ゆっくり展望を楽しんで、元の道を帰った。
天候に恵まれ、誰一人にも出会わない静かな山を楽しむことができたが、流石に登り応えがあった。
 帰り道で白屋岳の登山口を探しに行って、そこの小母さんに「白髭岳には白い鷹がいる」と聞いた。私たちが小白髭の手前で見た大きい鳥は、白ではなく茶色だったが、やはりタカだったのだろうか。 
 
【コースタイム】東谷出合(530m)8:15…水場8:55…神の谷コース分岐(1080m)9:55〜10:05…小白髭(1282m)10:30〜10:40…白髭岳(1378m)11:35〜12:20…小白髭13:15〜13:25…東谷出合14:55 <2001.06.29>

私の関西百山
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