35 局ヶ岳(1029m)





35.局ヶ岳(1029m)
【つぼねがたけ】この山も高見山地東端部にあり、伊勢三星の一つである。「昔、美しい局が険路を踏んでこの山に入り、奥ノ宮に参籠して再び帰らなかった」のが山名の由来である。
登山口の宮前から見上げる局ヶ岳は、名前の由来となったお局が十二単を拡げた姿のように、主峰の左右に盛り上がる稜線を従えて堂々としている。茶畑の多い木地小屋集落を走り抜ける。惟喬親王を祖とする木地師の村だが、小屋跡の立札でそれと知れるだけの、どこにでもあるような平凡な山麓の風景だ。道端に「怪力センコ(専固?)」の墓への道標や、石に窪みのある「センコの足跡」を見る。センコはもと大の弱虫だったが、局ヶ岳へ日参して百人力を授かり、紀州候の行列の邪魔をする牛を片付けた等の伝説の主である。墓という、もっともらしい証拠のあるのも微笑ましい。さらに山に近づくと、狭い道の両側に桜が並び、倒れ掛けた鳥居と小さい社がある。局神社だった。車は少し下の村外れに停める。
神社から川沿いにけっこう勾配のある舗装路を15分ほど行くと、左手にブリキの標識と鉄梯子、横に登山者ノートの入ったポストがある。ここから山腹に取り付く。
 最初から薄暗い杉林の中の厳しい登りだが、苔蒸した石や杉の落ち葉を踏んで行く道は、意外によく整備され、はっきりしている。おまけに一本道で迷うこともない。時々、右手はるか下に白い石が積み重なったような涸れ沢を見下ろし、ぐんぐん高度を上げる。
かなり登って沢を離れ山腹を捲くように左へ、大きなジグザグを何度か繰り返す。ようやく尾根に出る。ここが小峠で樹林はやや疎らになり、木の間越しに三峰らしい稜線が見えるようになる。(小峠まで駐車場所から1時間30分。
 再び勾配が強まり露岩も出てきた道を、短いジグザグを何度か繰り返して、急に頂上に飛び出す。(小峠~頂上25分)

1029mの頂上は思ったより広い空間で、三角点と20cm程の古い石標、それに山名や山岳会の名を書いた札を連ねた枯れ木が一本。しかし周囲が切り立っているだけに、360度の展望は実に素晴らしい。まず、西に三峰山から学能堂に続く山波、奥に高見山、その右には古光山から倶留尊山、ここからは見馴れた形とは違って見える大洞山、秀麗な尼ヶ岳と並ぶ。三峰山の左には大峰と大台、台高の山々が紫に霞んでいる。

昼食を済ませ、名残を惜しみながら山頂を後にする。登ってきた時よりも急勾配に感じる同じ道を下る。結構、厳しいとは言うものの登りに比べるとやはり楽で、ノンストップの1時間で登山者名簿のポストに帰り着く。

私の関西百山
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