32 鎧岳・兜岳


鎧・兜の名称は、形状を武具に見立てたものである。どちらも奈良県宇陀郡曽爾村にあり、青蓮寺川に面した南側に大岩壁を露わにして偉容を誇っている。


鎧岳(894m)【よろいだけ】

隣り合う兜岳より標高は低いが、やや背を傾げて屹立する姿はよく目立ち、兜岳の雌岳に対し雄岳と呼ばれた。
 『大和名所図会』に「雄嶽。葛(かつら)村にあり。一名鎧嶽という」とある。露出した柱状節理の岩肌を鎧のくさずりに見立てた名称である。岩壁は南に面して三段からなり、この辺りに多い柱状節理の中でも屈指の大岩壁で、特に青蓮寺川沿いの岳見橋から仰ぐと、鎧をまとった偉丈夫を思わせる堂々たる姿である。

兜岳(920m)【かぶとだけ】
鎧・兜に屏風岩を加えて「曽爾三山」と呼び、1934年、国の天然記念物に指定されている。兜岳、鎧岳とも、急峻な東側に反して西側は比較的緩やかで雑木に覆われている。青蓮寺川沿いには柱状節理の岩が多いが、1000万年前の室生火山の爆発によるマグマの痕跡という。兜岳の西側を、県道784号が走っている。かつての今井林道、更に古くは椿井越えといわれ、曽爾と名張を結ぶ重要な道であった。

曽爾村横輪から赤目掛線を北へ45分で、目無し地蔵がある。ここが登山口で深い樹林帯の中、露岩混じりの急坂を登る。
途中に大岩が二つあり右側の展望が開けるが、頂上は雑木林の中で無展望である。頂上まで目無し地蔵から45分。
兜岳と鎧岳を結ぶ道は、1962年(昭和37)にはヤブ漕ぎとルート探しにかなり苦労して、なんとか尾根通しに歩くことができた。

今は痩せ尾根の上にはっきりとた道が続き、右手の倶留尊山方面の展望が素晴らしい。しかし足元は切り立った断崖絶壁で足がすくみそうである。

急坂を下ると峰坂峠である。この峠を北に越すと布引谷に出合う。谷を左に遡ると落差30mに近い布引滝がある。また右(北東)に下ると、県道81号の通る落合にでる。ここから1q弱南にある小太郎岩は、幅約700m、高さ約200mの垂直の岩壁。「小太郎落とし」の伝説が残り、かつては岩登りのゲレンデとしても有名であった。
峠から再び、雑木林の中の急登になる。
 1996年11月に34年ぶりに登ったときには、稜線にしっかりした踏み跡があった。鎧岳の頂上は雑木が切り開かれて、曽爾高原方面の格好の展望地になった。

 3度目の2003年5月には登山道の随所に立派な道標が設置され、道も広くなって歩きやすくなっていた。鎧岳から清水谷分岐に下り、右に折れて杉林の中を行くと林道に出て、バス停や郵便局のある太郎路に出た。

私の関西百山
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