07 取立山(1307m)


【とりたてやま】福井県勝山市にある標高1307mの山。加越国境に近く、付近にはスキー場が多い。山名の由来は昔、加賀(石川県)から焼畑に入り込むものに対して勝山藩(福井県)が厳しく年貢を取立てたことによる。

水芭蕉を見に二人で福井の山へ。福井北インターで北陸道を降り、雁ヶ原、六呂師など、何度かスキーに来た懐かしい地名を過ぎる。石川県との境に近い「東山いこいの森」の駐車場に車を置く。
 45分で登山口に着き登山届を入れて出発。大滝への道を分け、再び林道を10分ほど登った分岐から山道らしくなるが、岩の崩れたようなゴロゴロした道で歩きにくい。だんだん強くなってきた日差しをまともに受け、額から汗が滴る。
 大きくジグザグを繰り返して高度を上げると右手が開け、赤兎山や経ヶ岳の辺りだろうか、斑らに雪の残る山が見える。標高差250mほど登ると勾配が弱まり、美しいブナ林の中の気持ち良い尾根道となる。
 新緑にアカヤシオや白いタムシバが美しい紋様を描く。イワウチワの花が多い小さなピークを越して、取立山三角点に着く。とりあえず乾いた喉をビールで潤す。
到着したときは中腹から上が雲で覆われていた白山が、正面に全容を現わしてくる。残雪の衣を纏い、どっしりとした姿だ。すぐ近くには緑の鉢伏山、大長山へ続く稜線。勝山市街の方はまだうす暗い陰になっている。食事を済ませ、下に見える避難小屋の屋根を目掛けて明るい笹原を下る。ピンクと朱色の二種類のショウジョウバカマが咲いている。
取立平へ降りると、お目当てのミズバショウはすぐ近くの湿地帯に群生していた。その数およそ3000株、ちょうど今が見頃で、純白の包と鮮やかな緑の葉が美しいコントラストを見せる。ロープに沿って群生地の周囲を巡る。残雪から流れ落ちるせせらぎ、足下にはイワウチワ、ショウジョウバカマ、イチリンソウが咲き乱れ、夢のように美しい楽園だ。去りがたい思いを断ち切って下山にかかる。
5分ほど急坂を登ると「こつぶり山」。爽やかな風が吹きすぎていた。林道のように広い整備された道を下る。そこここにアカヤシオが咲き、真紅の蕾もまた美しい。正面の深い谷間にかかる滝を目掛けて行く。滝の下から沢を下る道になり、時にフィックスザイルを伝って大滝に出る。
 水量の多い見事な滝で、しぶきで寒いほどだ。道は再び良くなり杉林に入る。さすが豪雪地帯のここの杉は、すべて根元が曲がっていて、それが一列に並んでいるのは異様な感じがした。道終点に帰りコーヒータイムの後、ワラビを狩りながら林道を下る。太くて長いものだけを摘んでも、すぐにスーパーのビニール袋一杯になり、面白いほどの収穫だった。いこいの森から北へ、トンネルを越えると石川県で、白山の登山基地・白峰。正面に白山御前峰が見える温泉宿で泊まることにした。夕食はタラの芽の天ぷらをはじめ、山菜尽くしだった。(1997.5.16)

【コースタイム】東山いこいの森10:15…林道終点11:00~11:05…取立山12:30~13:15 …取立平13:30~13:55…こつぶり山14:00~14:05…大滝14:55~15:00 …林道終点 15:25~15:45…東山いこいの森 16:30

*近頃はミズバショウのシーズンは人で溢れ、群生地の保護がたいへんと聞くが、この頃はまだまだ静かな山だった


私の関西百山
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