スイス三大名峰の旅(2)




9月23日(土)
快晴、今日も眠れず3時45分起床。マッターホルンのモルゲンロートが始まるのを、寒さをこらえて待ち構える。頂上から順に、次第にオレンジ色に輝いていく姿は、美しいというよりもむしろ神々しく思える。
登山電車でゴルナグラードへ向かう。アプト式の列車は右車窓に、ついで正面にマッターホルンを見ながら高度を上げる。ハイキングの出発点・ローテンポーデンより上は、かなりの積雪で、雪面がきらきらと輝いている。その中を行くハイカーの姿もちらほら見える。
ゴルナグラード駅で列車を降りる。目の前に見える城のような建物はホテルで、この屋上に展望台とロープウェイの乗り場がある。
展望台に登ってマッターホルンを背に記念写真 山岳救助犬のタラちゃんとツァー参加者全員で記念撮影
さらに上のシュトックホルンの下までキャビンで上がり、足首より上まである雪を踏んで岩の露出した小高い丘に登る。
南の眺め     Monterosa(4634m)                     Lyskamn(4480m) 
 
西の眺め Breithorn(4165m)        Gorner氷河           Matterhorn (4478m)      
今日も360度の大展望である。マッターホルンから左へ、クラインマッターホルン、ブライトホルン、リスカム、モンテローザとずらりと並ぶ峰々。その左にはミシャベル山群の鋭峰群。そしていくつもの氷河。ぐるりを雪と岩峰に囲まれて、今こそアルプスの真ん中にいる幸せを肌で感する。
いっまでもいたい気持ちを振り切ってキャビンに乗り、電車でローテンポーデンまで下る。 ここから下り一方のハイキング。山の経験があるというので、最後尾を歩くことになる。歩き初めて5分ほどで、マッターホルンの投影する池・リッフェルゼーに着く。
 写真では知っていたが、実際にその畔に立ち美しい風景の中に身を置いてみると、まるで夢の中のようだ。ここで昼食。マッターホルンを見ながらの弁当は、地上最高の味だった。
 *ハムとチーズのでかいサンドウィッチ、ローストチキン、ゆで卵、オレンジ、ミネラルウォーター。
あとはのんびりと景色を眺めながら、残った花が寂しげに咲く草原を下る。正面にマッターホルン、右手にはスネガやウンターロートホルンなどの雪を冠った山々が見えるが、すぐ横を鉄道が走っていて、下には目的地が見えているので全く緊張感がない。
リッフェンブルグ駅に看き、横のカフェテリアで休む。ここは手前がセルフサービスで、奥の席(マッターホルンに近い方)は可愛い少女が運んでくれる分、少し料金が高い。スイス独特のリベラ(乳精の発酵飲料)とアップルッツェ(発泡アップルジュース)を試しに飲んでみる。爽やかで乾燥した空気によくマッチして、実においしい。
ツェルマットに帰り自由行動になる。駅前のスポーツ用品店で、レキのアルペンストックを買う。別の店でアルプスの花の小さな本と、地図や土産のTシャツなども。駅からまっすぐ伸びるメインストリートには、ウィンパーが初登頂の前夜泊まったホテル(前に胸像が埋め込んである)や、山で死んだ人達が眠る墓地を持つ教会、突き当たり付近には古い家並みなどがある。その他は両側にずらりと土産物などの店が並ぶ。宿の近くのスーパーで、ビールとリベラを買っていったん帰り、18時半、夕食に再び町へ出る。ヴァリザー・カンネ(銀のポット)という店で、さんざ迷った末にMENU(定食)にして、ローカルの赤ワインを飲む。楽しい夜だった。
*チーズ・トマト・オリーブのサラダ、コンソメスープ、骨付きのビーフ、アイスクリーム、地のワイン。二人で8500円程。

24日(日)
 曇。氷河特急ならぬ氷河急行でアンデルマットへ。途中、1993年の大崩壊地の後を通る。何分間もずっと車窓から見えていて、とにかくスケールがデカい。次にサフランが咲き乱れる草原を通る。勾配が強い所だけアプト式になり、最後に長いフルカ・トンネルを抜けてアンデルマットに着く。すぐ昼食。
バスで七曲がりのメイエンの谷間を下る。大岩壁が続き、ロッククライミングの練習をする人影も見える。七曲がりのスーステン峠を越える頃から雨になる。霧の中に雪をかむった山が見え隠れする。

小さな池になっている
シュティン氷河の舌端を通り、高度を下げて木彫りの町・ブリエンツへ。ホルンを吹く人形が欲しかったがウン万円でとても手が出ない。生チョコとハンカチだけ買って、店の屋上から湖を見る。泉大津から来て働いている日本女性に写真を撮ってもらった。
15時半ごろ、インターラーケン郊外・WILDERSWILLのH・アルペングロツセ着。夕方、山から帰る牛の行列がカウベルを鳴ちして通るので、外に出て駅まで散歩。夕立に遭い30分、大きなユングフラウ三山のパネルが掛る駅の待合室で雨宿り。住宅街を歩いて帰ると、広い庭に姫リンゴの実が鈴なりだった。
 夕食は牛と豚と七面鳥のシャブシャブ風、ホンデュ・シノワーズに21種類も薬味が出て、そのうち19種類を一つの皿に載せて賞味する。残った汁でスープにするが、辛くて飲めたものでなかった。

25日(月)4時45分、起床。激しい風で窓の外の木が激しく揺れている。タバコを飲みにテラスに出ると風雨。最後の名峰ユングフラウに行く日に残念だ。それでも予定通り出発。小雨に濡れるBOB(ベルトオーバーラント鉄道)の列車の窓から見ていると、線路沿いの道を戦車が通る。天窓から首を出した若い兵士らが手を振っていった。途中から雨は雪に変わり、グリンデルバルドに着く頃は一面の銀世界となった。予定変更で直接、ヨッホヘ行くことになる。グリンデルヴアルトでWAB(ヴエンゲルンアルプ鉄道)に、さらにクライネシャイデックでJB(ユングフラウ鉄道)に乗り換える。アイガーの中を50分かかって抜ける。途中、アイガーヴァント、アイスメーアの2駅で途中下車して外を覗くが、窓に雪が凍りついて何も見えない。窓の内側の氷を懸命にこすって、やっと氷河がぼんやり見えた。

アイガーヴァント駅
ヨッホ駅は3454mの高度にある地下駅だが、近代的な施設が整っていて戸惑うばかり。まずアイスパレス(氷の宮殿)を見る。氷河をくり抜いた洞窟の中に、ペンギンやフェニックスなどさまざまな氷の彫刻が展示されている。床も壁も青白く輝き幻想的な雰囲気だ。

プラトー(雪原展望所)に出てみたが、ぼんやりとアイガーの壁が見えただけ。寒さですぐ引っ込んで、エレベーターで120m登ったスフィンクスに登る。吹雪の中で写真を撮って、すぐに降りる。あっという間に1時間が過ぎた。 KLシャデラックに帰ると雪が止み、青空が拡がってアイガー北壁がかすかに見え出した。
展望所
グルンドまで列車で下り、急に予定のメインリッヒへ行くことになり、ロープ駅に行く。ここで行きたくない人が出て、9人だけがキャビンに乗り40分かかって上へ。途中から雪雲の中に入り、上は完全なホワイトアウト。カフェテリアでコーヒーを飲み16時まで待つが天候は好転せず、やむなく下山する。
 夜はイム・ガーデという郷土料理店で名物のチーズ・ホンデュを賞味。癖があって、あまり旨いものではなかった。

26日(火)
曇。バスが出発する時、わずかにメンヒが見えた。

「四つの森の地方の湖」フィーアヴァルトシュテット湖北端に位置する中世都市・
ルツェルンヘ着き市内観光。ワグナーやニーチェらの芸術家を啓蒙し、トスカーニらによって始まった夏の音楽祭でも有名な町である。

このルネサンス式の
市庁舎はイタリアの名匠、アントン・イーゼンマンの作で1602〜6年に建築された。
ライオン記念碑を見る。フランス革命の時、ルイ14世とマリー・アントワネットを守って殉死したスイス傭兵を、百合の紋章を守る瀕死のライオンで表している。

傷つきながらも使命を果たそうとするライオンの顔が痛々しい。前の土産物屋で木彫りのライオン像とルツェルンの本を買った。
町の中を流れるロイス川には屋根つきの橋が二つ架かっている。
 この
カペル橋は1333年に完成後、ルツェルンのシンボルとして親しまれ来たが、1993年に放火で焼失して(私たちが訪れた前年の)1994 年再建されたばかりである。新しい木の部分がまだしっくりしないが、欄干には市の公園課自慢の花籠が吊され、古い八角形の貯水塔と並んで瓦葺きの屋根が川面に映えて美しい眺めだ。天井の梁にはスイスの歴史上の出来事や、この町の守護聖人の事績を描く板絵が111枚も並んでいる。橋の下には白鳥がのどかに浮かんでいた。また橋の付近には露天の市が並んで、日本の朝市と同じ光景が繰り広げられている。 
旧市街を歩くと、壁画の描かれた建物が多い。写真はHotel Des Balances

オールドタウンにはベルンによく似た噴水塔があった。
スーパーで買物をして、現存するもので一番古い(1408年建築)シュプロイヤー橋も渡る。ここは内部に礼拝堂があり、中世の疫病の跳梁を描いた「死の舞踏」と呼ばれる板絵が欄間に飾っている。
午後、チューリッヒへ。スイス最大の都市で世界経済にも欠かせない国際金融都市である。しかし今も商業で栄えた中世の面影を色濃く残している。中心部から少し離れたホテルに荷物を置いたあと夕食まで自由行動。往復2時間かかって繁華街のバーンホーフ通りにある中央駅前まで散歩する。チューリッヒ湖で白鳥と遊び、11世紀のロマネスク様式の大寺院グルスミュンスターやシャガールのステンドグラスのあるフラウミュンスター寺院を見学した。
 夕食はゲシュネッツェルテス(仔牛のクリーム煮)、パスタ、フルーツに生クリームかけ、グラスワイン。
トランクの整理をして、スイス最後の夜を過ごす。

27日(水)
曇。朝、チューリヒ発。空港でワインやチーズなどの買物。窓側の席がとれ、遠くアルプスの峰々が望めた。1時間でパリ乗り継ぎ。帰りはよく寝られて、それほど長く感じなかった。
香港で乗り継ぎ、翌28日関空に帰った。

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