高野山・町石道



【町 石 道】九度山慈尊院から高野山への表参道。道しるべとして一町ごとに建てられた五輪卒塔婆形の石柱(もとは木製卒塔婆)が、22キロに180基並んでいる。

【登 山 日】2005年4月16 日(土) 晴れ
【メンバー】日本山岳会関西支部 会員6名、会員外2名 計8名
【コースタイム】九度山駅09:25…慈尊院(180町石)10:00…雨引山への分岐11:00…一里塚11:20…六本杉峠11:35〜11:57…古峠(124)12:17…二ツ鳥居12:25〜12:30…九十町石13:20…笠木峠13:25〜13:35…三里塚14:00…矢立茶屋14:20〜14:30…展望台15:15〜15:30…大門16:20〜16:30…根本大塔16:40



11月に行われる支部70周年事業のひとつ、記念山行の下見を兼ねて町石道を歩く。
 南海高野線九度山駅では、思ったより大勢の人がザックを担いで降り立った。世界遺産になったせいか、なかなか人気があるようだ。真田庵の下を通り丹生橋を渡る。青空の下、「壬生川渡し」の鯉のぼりが連なって泳いでいた。
 シダレザクラが満開の
慈尊院境内を抜けて、丹生官省符神社へ登る石段途中に「百八十町」と記された最初の町石があった。ここから一つづつ数字が減っていくのを楽しみに町石を見て歩くことになる。
鎌倉時代建立のものが8割以上も残っているというが、殆どが3mを越す高さで実に見事な石柱である。神社横から涼しい竹藪を抜け、緩く登っていく。スミレ、タンポポ、ヒメオドリコソウ、エンゴサク、シャガなどの野の花が、行く春を惜しむように競って咲いている。急坂にかかるところで他のパーティの先にでて、展望台を横目に勾配が緩くなる柿畑の小屋まで一気に登る。快晴で初夏を思わせる気候である。眼下に紀ノ川の流れと九度山、橋本方面の眺めが拡がり、爽快な気分になる。
ここからなだらかな道を少し歩くと、ようやく地道になり杉林の中に入る。短い急坂で雨引山への分岐を過ぎ、平坦になった道を行くと一里石があった。この里程塚は山上に近づくにつれて数字が増えていく。
 涼しい杉林が続き、汗が引く頃に
六本杉に着いた。一回目の昼食をとる。残り163町、ここで丹生都比売神社へ行く道と二手に分かれる。高野山の守護神をまつるこの神社にも興味があったが、ここまでの所要時間から割愛することにして先を急ぐ。
古峠を過ぎ、丹生都比売神社から登ってくる道が再び合流するところに二ツ鳥居が建っている。山上明神社の一の鳥居であり、また丹生都比売神社の遙拝所として、最初は弘法大師が建立したと伝えられる。眼下に神社が鎮座する天野の里が一望される、景色のよいところである。二つ並んだ大鳥居の横に満開の大きな桜の木が見事だった。
下りになり、ゴルフ場の横を通る舗装路に変わる。カートのゴルファーとキャディーに出会う。応其池はゴルフ場の中にあり、ここも緑の山を背にしたサクラが満開だった。その先の小さなお堂が神田の子安地蔵堂。滝口入道を慕う横笛がこのお堂で恋人を待ち続けたという伝説の地である。山道になり、すぐに二里塚にであう。再びゴルフ場のすぐ横の道になり、ネットの途切れたところには「ボール注意」の立て札がある。ようやくゴルフ場から離れ、雑木林の中をしばらく登ると九十町石があった。イノシシよけのためか、周囲には高圧電線が張り巡らされている。ここで、ようやく半分の道のりをきたことになる。
さらに登った草地に小さな作業小屋があり、T字路になったところが笠木峠だが、登り途中で峠らしい感じはしない。道標や高低図付きの大きな地図標識があり、左に行けば上古沢駅に下る。ショウジョウバカマの群落を過ぎるとまた下り坂が続く。「下った分だけ後でおつりがきますよ」とMさんが脅かす。エンジン音が聞こえて左手に車道を見下ろすようになり、やがて見覚えあるガソリンスタンドや茶屋が建つ車道に出た。
矢立茶屋の床几で休む。あと六十町、三分の一の道程になった。しかし茶屋の横から急な山道の本格的な登りになる。すぐ六地蔵を見て、袈裟懸石、押し上げ石など大師伝説のある石の傍らを過ぎる。暗い杉林の中にミヤマカタバミの白い花が鮮やかである。勾配が緩むと、左手に山並みの重なりが展望される峠状のところで再び車道を横切る。急な登りで頭の上に見える展望台に登る。正面の木の間に竜門山、その右に飯盛山が望めた。
一休みして慌ただしく二度目の食事をする。ここからは車道に沿っていくが、車道が登っていくのに町石道は下り気味なので直ぐに間が開いてしまう。
 四里石、30 町石を過ぎると鏡石があるが、名前倒れの平凡な石である。いつの間にか細い流れに沿うようになり、ヤマルリソウが沢山咲いているのを見ながら行く。この辺り、新しい木の橋を架けたり道を手入れしたところもあり、世界遺産になって整備が進んでいる様子がうかがえる。
最後は急な登りを予想していたが、大きくジグザグを切る新しい道に代わったようで案外楽に大門前の車道に飛び出した。八町石は案内所前、七町石は弁天岳登り口、六町石は門を潜ったところと大門周辺に集中して町石がある。朱塗りの門の前で記念撮影後、あと五つの町石を辿ってバス道を歩く。
 
最後の町石は壇上伽藍手前に柵で囲まれて、杉林の中にひっそり立っていた。ゴールの金堂、根本大塔に詣でて長い町石道歩きを終える。夕陽があかあかと塔を照らしてる。軽いハイキングコースと思っていたが、随所で歴史の重さを感じさせられる素晴らしい道だった。長い道を歩き終えた満足感に浸りながら、お山をあとにした。


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