2012 ネパールの旅 


 (1)バクタプル


5度目のネパールは、これまでのトレッキングと違って初めての観光ツァーでした。その前にネパールを訪ねたのは2006年、ギャネンドラ国王の独裁時代。その後、民主化運動の高まりで王政は倒れ、政体はネパール連邦共和国となりましたが、まだまだ政情は不安定なようです。
 しかし、6年ぶりのポカラやカトマンドゥは車とバイク、それに人で溢れていました。埃と喧騒に加えてクラクションの音に脅かされて、ゆっくり町の景色も見ておれません。乾いた空気と埃で喉をやられ、おまけに寒暖の差が激しくて風邪を引いてしまいました。しかし少し離れた丘から遠望したヒマラヤの山々は、白く神々しい昔のままの姿で私たちを迎えてくれました。
 ネパール滞在は実質6日間の短い旅でしたが、イタリア旅行以来の友人3人も一緒で楽しい想い出が作れました。ここでは初めての訪問地に絞ってレポートします。

カトマンドゥから専用バスで今夜の泊地・ナガルコットへ向かう途中、東へ15kmほど離れた古都・バクタプルを観光します。
 バクタプル(BHAKTAPUR)は田園地帯の小高い所にあり、バドガオン(帰依者、信仰の町)と呼ばれる、中世の面影を残す古い町です。バスを降りて赤レンガを敷き詰めた静かな道を少し歩くと、大きな木の下の祠を二匹の獅子が守っています。
左に折れて坂を上るとダルバール広場です。
 ダルバールは王宮の意味で、ダルバール広場はカトマンドゥにもパタンにもありますが、このバクタプルの広場が一番美しいと言われています、この白い門は「獅子門」(LionGate)と呼ばれ、両側に獅子像があるということです(…が見逃しました)。
広場に入ると正面右にはパシュパティナート寺院。左奥の寺院はバグバティ寺院、その前にマッラ王の石柱が見えます。広場の左側が旧王宮です。
ブパティンドラ・マッラ王は17世紀終わりから18世紀にかけてネパールを治めたマッラ王朝の一人。
 彼が神に祈りを捧げる姿を刻んだこの石像は、ネパールの石像で一番美しいといわれています。

旧王宮の右翼部分は「55窓の宮殿」と呼ばれています。それぞれの窓には美しく精緻な装飾が施されています。
旧王宮への入り口「Golden Gate」。
 門の周囲はヒンドゥーの神々の姿の彫刻で飾られています。
この石造寺院はバトサラ・ドゥルガ寺院といいます。インドのシカラ様式と言われる建築様式です。
 右の二層になっているパシュパティナート寺院は、バクタプル最古の寺院(1492年建立)とされています。シヴァ神の化身の一つパシュパティを祀っています。屋根の支柱の彫刻がなかなかエロチックなんですが…。
寺院の前から細い道でつながるトゥマディー広場に入ると、まず目を引かれるのが、このニャタポラ寺院です。
 30mの高さがあり、1702年にプパティンドラ・マッラ王が建立したカトマンドゥ盆地で一番高い「五重塔」の寺院です。
石段の両側には守護神として、下から順に伝説の戦士(ジャヤ・マッラとバッタ・マッラ)、象、獅子、グリフィン、女神の像が並んでいます。この戦士は人間の10倍の力があるとされていて、象は戦士の10倍、獅子は象の10倍と上に行くほど、その力は10倍づつパワーアップしていきます。このように厳重に守られている御本尊も女神さまですが、扉は釘付されていて一度も開かれたことがないとか…。しかし、この地方を襲った1934年の大地震にも、この寺院は殆ど被害はなかったそうです。女神の力によるかどうかは別として、往時の技術力の高さを示しています。
ニャタポラ寺院の基壇の最上層からは、広場を取り巻く建物の向こうにバクタプルの町と緑の野、そして町を取り巻く山並みが見えました。空気が澄んだ朝ならヒマラヤの白い峰も見えることでしょう。
 煉瓦を敷き詰めた広場の左に見えるのは、ヒンドゥーのシヴァ神の化身を祀るバイラブナート寺院です。
正面から見たバイラブナート寺院です。
 17世紀に建てられたときは一層でしたが、18世紀に二層に増築され、さらに大地震のあとで現在の三層の姿になりました。
広場を囲む建物は赤い煉瓦造りで、窓の形が特徴的です。しばらく商店の並ぶ石畳の道を歩きます。

ここはバクタプルで最も古い広場・タチュパル広場です。ダッタトラヤ広場ともいいます。かっては町の中心部であり伝統的なネワール建築も残っています。
 広場中央に立つダッタトラヤ寺院は1427年、ヤクシャ・マッラ王の時代に建てられ、なんと一本の木から彫りだされたといわれています。御本尊のダッタトラヤはヴィシュヌ神の化身なので、前にはその乗り物であるガルーダの像が立っています。また先ほどニャタポラ寺院で見た「伝説の戦士」も控えています。またダットラヤは仏陀とも縁があるので(ブッダの従兄弟)、仏教徒にとっても大事なお寺です。
細い通りに入るとブジャリ・マートがあります。元はヒンドゥー教の僧院でしたが、今は木彫り博物館になっています。
 一見したところはお土産屋さん風ですが、看板に「PEACOCK WINDOW HANDCRAFT CENTER」とあるように、上の「孔雀の窓」が有名です。
羽を拡げたクジャクの周りによく見ると35羽の小さな鳥が並び、他にも悪魔と言われる人物像など、ネパール工芸の最高傑作と世界的に評価されています。
 このあと、紙漉き工場を見学してバスに乗り、夕刻ナガルコットに着きました。


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