71 烏帽子山(909m)





(えぼしやま)那智山は高野山と同じ様に、那智滝の背後に連なる山々(烏帽子山、光ヶ峰、妙法山)に囲まれた一帯を指し、青岸渡寺や那智大社、妙法山阿弥陀寺などで知られる霊地である。周囲の山々は海との距離が短いので谷の傾斜が強く、那智四十八滝と呼ばれるように多くの滝を掛けている。主峰の烏帽子山は、頂上近くに烏帽子の形をした大岩があり、熊野灘に浮かぶ島々や玉置山始め南紀の山々の展望が得られる

 2004年12月15 日、前日は熊野速玉神社に参拝して、ご神体山・権現山(主峰・千穂ヶ峰)に登り、浮島の森などを見て勝浦に泊まった。海岸の宿のテラスから那智の山々を眺めると、那智の滝の右に見える烏帽子山は左の妙法山に比べ、あまり目立たない、つつましい山である。 
曼荼羅の郷河川公園駐車場に車を置き、那智川を渡り、十方院や発電所の横を通って、東ノ谷沿いの古い石畳の道を登る。20分ほど行った堰堤の奥にある陰陽の滝は、落ち口で二つの滝が一緒になって滝壺に落ちている。左側から流入するクラガリ谷には夜見ノ滝が懸かっている。
 その落ち口で沢を渡ると、再び谷沿いに苔むした石が並ぶ平坦な道を行くようになる。
ときどき美しい滝が現れて目を楽しませてくれる。徒渉地点や重要な分岐には「新宮山の会」の標識が設置されていて心強い。
 尾根コース分岐を過ぎると道はようやく登りになり、二度三度、離れてはまた沢に下る。苔むした石囲いが並ぶ窯跡らしいところで沢を離れ、急斜面の灌木帯をジグザグに登る。みるみる高度が上がり爽快だ。
 登り切ったところで
松尾ノ滝に出合う。落差40m、下方で扇形に拡がる形で一枚岩の上を流れ落ちている。
 ここから支流沿いに行くと、いつしか水音が消えて源流の様相となり、やがて林道に飛び出してしばらくで道標の示す山道に入る。
小さなコルからコブを越して別のコルに下ると「立石コース」を示す標識があり、案外早く岩のすぐ下を登るようになる。しばらく急な登りが続くと帽子岩と山頂を結ぶ稜線にでた。 右に5分も登ると、一等三角点が埋まる明るく気持ちのよい山頂に着いた。周囲が木に囲まれてあまり展望がないのが残念だ。
役行者が残した帽子が岩になったという帽子岩へ、小さな梯子と鉄鎖で登る。頂上よりも見晴らしが良く、大雲取山から冷水山へ続く稜線がくっきり見えた。しばらく展望を楽しんで、岩の下で昼食をすませ林道に下る。
 じめじめした林道を15分ほど歩いて鬼杉谷の下降点に来て、スギ植林の中を下る。緑に苔むした岩や清流を見ながら行くと、美しい滑滝に出合う。太陽神・大日霊女( おおひるめ)の滝である。再び林道を歩いたあと、本谷沿いの山道を下る。この谷も大きな石や倒木がびっしりと美しい苔で覆われている。三の滝は落ち口をのぞき込んだだけで通過、堰堤横の石段を下る。二の滝は落差25mだが、豊かな水量で堂々とした姿である。三箇所ほど徒渉を繰り返して西ノ谷の出合にくる。「ここより下流は神域につき立ち入り禁止」の標識がある。
西の谷を渡り、黒いロープが張ってある岩場をへつる感じで斜めに登る。苔むした石段を下ると那智山原生林の中を行く道となり、やがて青岸渡寺三重の塔の上に出た。
 青岸渡寺、熊野那智大社に詣で、夕暮れ迫る大門坂を駆け下りるようにして車を置いた駐車場に帰る。終日、他の登山者の姿もなく、二人きりの静かな山と谷を楽しんで念願の山行を終え、今宵の宿・川湯温泉に向かう。
【コースタイム】曼荼羅の郷河川公園P08:25…陰陽の滝08:45…尾根コース分岐09:20…支尾根への取り付き10:03〜10:08…松尾の滝10:25〜10:35…林道終点11:00…烏帽子山11:45〜11:50…帽子岩(昼食)11:55〜12:37…林道終点13:00…鬼杉谷への下降点13:15…山の神13:55〜14:05…二の滝14:40〜14:45…西の谷出合15:00…青岸渡寺15:25…大門坂入口16:00…曼荼羅の郷河川公園P16:17

私の関西百山
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