九寨溝・黄龍と楽山大仏の旅   (2)

2010年8月27日. 九寨溝
樹正溝に沿って左手に並ぶ、いくかの湖沼や右手のチベット村を車窓から眺めながら、15㎞離走った諾日朗瀑布で下車。Y字の上の二つの溝がVで交わる辺りである。ここの標高は2,365m。
諾日朗瀑布
滝の高さは24.5m、幅は320m。これまで九寨溝で発見された中では最も幅の大きいトラバーチン化(水に溶けている炭酸カルシウムが沈殿してできた緻密な縞状石灰岩)滝である。西北方向の断裂の影響により断層が形成されて、その土台に第四紀氷河の沈殿物と土砂が厚く堆積している。

(現地の説明板とHPなどを参考にした。以下同じ)
日則溝の地下水、地表水がここを通り過ぎ、大量な石灰石の沈殿物をもたらしたので、滝の縁はだんだん高くなってきている。夏と秋には、滝は灌木で幾つかの水束に分れ、まるで帯状の白い絹布で、遠来の遊客を歓迎しているように見える。冬には氷が滝を飾り、別の風景に変身するという。 
水しぶきに虹が架かった。ここから見ることができるのは滝全体の約三分の一で、後は樹林の中に隠れている。その規模の壮大さに圧倒された。
長海
標高3,103mにあり、長さは4,349m。最も幅の広い所は415m、平均幅は236.4m、平均の深さは44.57mで最も深い所は88.8m。 面積は928440平方mあり、九寨溝にある数えきれない湖のうち最大規模を誇る典型的な「堰塞湖」(堰き止められた湖)である。
現在から53.6万年前に形成された長海には、古い第四紀氷河の遺跡が残されている。水位は8~9mで変化し、もっとも低い時も4mを下らないので、一年中水量はあまり変わらない。

日則溝と樹正溝にとって補給かつ調節用の重要な水源になっている。

こんな高度と思えないような、緑の山肌に囲まれた静かな湖面に、雲を浮かべた青空がくっきりと映っていた。
五彩池
五彩池は長海から1kmほど下流にある。長海から高度順化のために、しばらく別の場所まで歩いてバスに帰った。この間にはタケカンバやシラカバの仲間の「赤樺」の木が多く、珍しく思った。
しばらく走ってバスを下りて林の中の階段を下っていく。五彩池は上からの眺めが特に良いということだった。割合に小さい池だが、周囲を森林に囲まれ、九寨溝屈指の美しさを誇っている。

標高2995メートル、長さは100.8メートル、平均幅は56メートル、平均深さは6.6メートル、敷地面積は5645.8平方メートル。

カルシュウムとマグネシュウムイオンが長海より豊富である。主な色調は華やかなブルーである。
 
池の底にある大量な黄色、緑の藻類や、グレーや白いカルシュウムの沈殿物が反映して美しく輝いている。終わりの方の原文は「更加変幻多姿 絢爛奪目」で、その情景を簡潔によく伝えている。

水の透明度が素晴らしく、底に横たわる倒木に石灰分が沈着している様子も良く分かった。
九寨溝民俗文化村
九寨溝エリア内には幾つかのチベット人の集落があるが、観光道路沿いにも三つある。この辺りは農地が少なく、牧畜や林業も出来ない(世界遺産のため?)ため、殆どの人がバスの運転手、助手、ホテルの従業員など何らかの形で観光に関わって生計をたてている。「九寨溝民俗文化村」は「樹正寨」の一角を土産品店街としたもので、今ではチベット族にとって重要な収入源になっている。これまで、樹正溝では違法で民宿を営んで旅行者を泊めていたが、昨(2009)年からは厳格に法律が適用され、一切、宿泊を認められなくなった。それ以後、チベット族特有の木造建築の民家を有料で公開する家が多くなったようだ。そのためか、私には古い伝統文化というよりもケバケバしくてワザとらしい、いかにも観光客向けの民俗村という感じがした。日本語をかなり流暢に話す「村長」の家を見せて貰うことになった。
まず、このマニ車を全員に回させて「オムマニペニフン」の意味を教えた。ン!回し方がチベット仏教とは反対で、時計と逆回り!実は、この辺りの宗教は「チベット仏教」ではなく「ボン教」で、この祈祷車はマニ車ではなく「マシモ車」という。タルチョー(祈祷旗)、チョルテン(祈祷塔)なども、すべてボン教のものである。道理でネパール奥地やチベットで見た祈りの風景とはどこか違うと、違和感を持ったはずだ。
「村長」宅の玄関にはヤクの頭が飾られていた。内部は鮮やかな色彩の乱舞で目も眩むばかり。タンカなどの仏像の絵は、坊さんのアルバイトだそうだ。居間中央にある祭壇の右手には大きな液晶TVが置いてあった。

別棟の広い部屋に案内されて、バター茶のご馳走を受けた。「食べやすいように甘みを加えてあるが本来は塩味で、これでムギコガシの粉を食べるのが朝食だ」という説明があり、朝食「風景」は終わり。
あとは部屋の周囲に飾ってある土産物の販売に移った。特に玉で作った枕の上におく敷物が主力のようだった。 この部屋を出ると、向かい側にも同じ造りの商品ショールームがあり、「村長」は急いで別の観光客を迎えに行った。何か淋しい、気の毒な感じのする「チベット村」だった。
 近くの「諾日朗旅遊服務中心」(ノーリラン観光センター)で昼食をとる。レストランや軽食コーナーのある建物の中庭や通路には、ぎっしりと土産物の売店が並んでいた。
 午後はY字の中心・諾日朗から右(西)へ日則溝を遡る。
五花海
「五花海」は日光の射しこむ角度や強弱によって、水の色が淡黄、エメラルド、マリンブルー、濃紺など様々に変化することから名づけられた。九寨溝でも特に優れた見所のひとつである。
五花海の色彩と輪郭は、尾羽を半ば扇状に広げている孔雀に似ているので「孔雀海」とも呼ばれ、"九寨溝の一絶"(九寨溝でしか見られない景色)と讃えられてきた。

標高2472メートルにあり、深さ5メートル、面積90,000平方メートル。山崩れと地滑りの崩れた物質が川を塞ぎ、今の五花海を作り上げた。
池の畔を散策してさまざまに変化する美しい水の色や、石灰分の付いた水底の倒木が創り出す奇妙な造形などを鑑賞した。
炭酸カルシウムを中心とする多様な石灰化鉱物が水底に沈積したので、極度に透明度が高い。微細な浮遊物がないために水中浅所での散乱がなく、湖底で反射した光の内から青い光だけが眼に多く届くようになり、水の青さが際立つ。また湖の中のさまざまな藻類、コケ類が、緑や黄色を加わえている。太陽光や空の状態も影響し、水面で反射する光も加えて、日により時間によりさ神秘的に変化するさまざまな色彩が生まれるという。 
熊猫海(パンダ海)
熊猫海は五花海からバスで5分ほど走った、標高2587メートル地点にある。長さ570メートル、平均深度15m、面積91200平方m。まれにパンダが現れるのは、近くにパンダの好む種類の竹林があるためで、この湖で水を飲むパンダの姿も見られたそうだ。
湖にそって右手に少し歩くとT字の分岐があり、左は湖岸に沿って湖面に突き出すように、屋根つきの桟道が設けられている。桟道の山側は、湖に落ち込むように切り立った断崖で、崩れやすそうな黄色い縞模様の岩石が露わになっている。上の屋根は落石よけのためのようだった。

分岐の反対側は急な木の階段道で「熊猫瀑布」へ続いていて、滝大好きの和子が展望台まで下りて写真を摂ってきた。
日則溝はパンダ滝の下で五花海になり、再び狭まって途中で小金鈴海、大金鈴海を経て、次にやや大きな湖沼・珍珠灘に至る。バスを降りて約2キロ、1時間ほどのウォーキングをする。珍珠灘の上部を横切るように進んでいく。
珍珠灘の「珍珠」は真珠のことである。. 流れる水の泡が美しい真珠のように見えるところから名付けられた。

緩やかな傾斜の淡いグリーンの苔の上を、清らかな水がさざ波を立てるように、小さな丸い粒を連ねて流れ落ちていく。

しばらく、その様子を眺めながら湖に沿って歩いいくと、流れは急流に転じて滝となる。急な木の階段道で滝のすぐ横を通る。
珍珠灘瀑布
標高2433メートルの地点にある。三日月の形で幅163メートル、最大落差40メートルの雄大かつ壮大な滝である。九寨溝の急流の中で、水色が最も美しく、流れは最も激しい滝と言われている。

滝の下まで凄い水しぶきが飛んでくる。 
50分ほどでウォーキングは終わり、バスで諾日朗からY字の縦の画の樹正溝に沿って下り、老虎海で下車する。

長さ300m、最大の幅は150m、平均の深さは3m。真っ青で実に美しい水の色だった。すぐ下で滝となって落ちる音が、トラが咆哮するようだというのが名前の由来である。

湖の畔に下り、流れに沿って少し歩く。流れが急になると樹正瀑布という滝になって落ちている。流れを利用した粉ひき水車小屋があった。
車に帰り、車窓観光が続く。群正樹海で一時停車して写真休憩。ここは大小19個の湖の群れが段差を付けて並んでいる。
 次に芦の中に細長い湖が続いている「芦笙海」を見て、最後に九寨溝で最下流にある盆景灘にくる。緩やかになった流れの中に大小の木立があり、盆栽にたとえられている。

これで九寨溝観光をすべて終わり、「茶芸店」でショッピングがあってシェラトンホテルに帰った。別館で食事を済ませ、明日の早朝出発に備えて荷物の整理を済ませ、早めにベッドに入る。
九寨溝・黄龍・楽山大仏の旅(3)に続く

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