アンナプルナ展望トレッキング(2)


タダパニからはポカラへの、往路とは別のコースですが、いろんな出会いや思わぬ出来事もあり、まだまだ楽しい旅が続きます。


雨中のトレッキング  4月1日(火)

タダパニ(2630m?)8:00…バイシカルカ9:00…ガンドルン(1951m)11:00〜11:25…モディコーラ(1420m?)12:30〜13:20…ランドルン(1646m)14:30

トレッキングのペースにも慣れた頃になって、風邪を引いて少し熱もあるようなので、今日は出きる限リビスターリで歩くよう心がける。ゴラパニから後は出会う人もぐつと少なくなった。      静かな深いシャクナゲ林の中を降りていくと、苔むした大木の枝からサルオガセのようなものが無数にぶら下がり、幹にはランが寄生して白い花が咲いている。1時間でバイシカルカを過ぎ、美しい滝のある小沢沿いに下る。
 山腹から沢へ、また山腹へと歩くうちに、かつては日本のどこにでもあつたような山村風景の中に出る。粉をひく水車小屋がある。菜の花にモンシロチョウが舞い、麦の穂が豊かに波を打つ。
 ここガンドルンは200軒を越す大きな村で、電灯も引かれている。小学校の校庭では子供達がダンスの練習をしていた。バッティでお茶を飲み、村の中を石段で下る。モディコーラを間に挟んだ対岸の山腹、美しい段々畑の中に今夜の泊地ランドルンが見える。
ガンドルンからは眼下のモディ・コーラ目掛けて標高差500Mの大下り。ジグザグを繰り返して岸辺まで下り、小さいタンポポやスミレの咲く気持ち良い草地で昼食。
コーラに架かる吊橋を渡り、石畳の急坂を登る。雨が降り出し、横の林で例の尻尾の太い猿が大勢騒ぐ。雨具を着て登るうち雷鳴を伴う本降りとなり、ガイやバッチャルのグがすべて洗い流され、道はたちまち茶色の濁流となった。
ランドルンに着くと雨は嘘のように上がって日が射してきたが、幕営地は水浸しでまたロッジに入る。再び激しい雷と共に雹が降る。ここは石造りの部屋にベッドが二つ、天井は茅?葺きで隙間が見えているのに不思議に雨漏りはしない。

お別れパーティ  4月2日(水)
ランドルン7:50…トルカ8:50…ベリカルカ(1800m?)9:50〜10:20…ビイチュク峠(2300m?)11:05〜11:15…ポタナ12:00〜13:00…ダンパス14:00  
まずまずの天候。まだ暗いモディ・コーラの谷間の上高く、アンナプルナサウス、アンナプルナT峰、ヒウンチュリが朝の陽に輝いてくる。

今日はまずトルクまで山腹に付けられた水平道を行く。 次に少し下り、右手に深い谷間を見る。有刺鉄線が張ってあるのは、祭りのチャン(濁酒)に酔っぱらって転落する人がいるからだそうだ。吊橋を渡って少し登ったベリ・カルカで、グルン族の茶店で休む。
アマ(母)は台所でロキシー(酒)造り、ダバ(父)は外で竹籠を編んでいた。もう一度吊橋を渡り、いろんな色の羊が群れているバッティ横から、標高差300mの長いジグザグ登りでビィチュク峠(2100m)に着く。

ロッジ前からポカラの町と湖が見える。シャクナゲ林、ついで草地の中をゆるく下る。ツエクサに似た花、タンポポ、スミレ、どれも日本の花のミニ版だが数は驚くほど多い。ポタナで昼食中に少しパラパラきただけで後は晴れる。
   
午後は1時間歩いただけで泊地のダンプス着。今までで一番テントの数が多い。ここでポーターを解約。笑顔で手を振りながら、一足先にポカラヘ下っていった。夕食に鶏を1羽買ってつぶし、スープに始まり、ステーキ、天ぷら、カレーとチキン料理尽くし。

人懐っこいククルの親子が私たちのテントを覗きにきて、骨のお相伴にありついた。デザートは「WELLCOME FOR YOU SEE AGEIN」と書かれた大きな蒸しケーキ。コーヒーの後は、星空の下でトレッキング最後の夜を惜しんでお別れ会。
ロキシーはキビで作った焼酎で、少し癖があるが慣れると美味い。童顔のダネイが陽気なカジの歌に合わせて踊る。皆の手拍子ではにかみ屋のユーフラッツも加わり、最後には私も引っぱり出されて見様見真似の目茶踊り。 最後はトレッキングソングで「レッサム ピリリ、レッサム ピリリ、ウレラ ジャンキ ダラマ ボソン、レッサン ピリリ」と合唱。私が風邪を引いているので「問題アリマス」(ミンの口癖、No Problemの反対)と早めにお開きになったが、この間にチャウラ(子犬)も炊事小屋に忍び込んで、たらふく飲み食いしていた。少し感傷的になるほど、素晴らしい夜だった。

旅の終わり 4月3日(木)   ダンパス7:45…フェディ9:30〜9:30==ポカラ10:00
テントから首を出すと、曇空ながら正面にマチャプチャリが見える。左端のアンナ南峰から右端のマナスル山群にいたる大パノラマは、残念ながら次第に雲に覆われてしまった。
ダンプスの村はずれから眼下に見えるモディコーラロ指して、980mの標高差がある急坂を一気に下る。最後は村の中を通リバスの通る道を見ながら、いつも長い山行の終わりに感じる、これで終わりという安らぎと淋しさが入り交じった複雑な気持で歩く。    
 
フェディからおんぼろバスで、ポカラの最初のロッジ裏庭に帰る。わずか1週間の間に菜種などの野菜がずいぶん大きくなつていた。昼食時、また激しいシャワーがあつた。心付けを渡してコック達ともお別れする。声が全く出なくなり、十分お礼が言えなかったのが残念だ。 車でホテルに入り1週間ぶりにシャワーを浴びると、驚くほどの垢がでた。
4月6日0時、カトマンドゥを離れました。機上から見下ろす町の灯りは、ネオンや蛍光灯がないだけにオレンジ一色で、実に暖かい感じです。その光がすぐに遠くなっていきます。いろんな人と出会い、様々な事を考えさせられた12日間でした。少しばかり心が洗われ、ちょっぴり人生観が変わったように思います。神々が住むというあの高峰を仰ぐために、ぜひ近いうちに帰って来よう。二人でそう誓いあいました。

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